福岡市美術館「高畑勲展」レポート

2021年4月29日(木・祝)~7月18日(日)の期間、福岡市中央区大濠公園の福岡市美術館にて、「高畑勲展  日本のアニメーションに遺したもの」が開催されます。

福岡市美術館の場所は、福岡県福岡市中央区大濠公園1-6です。



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高畑勲展の展示室内は撮影禁止ですが、館内にフォトスポットがあります。
1Fはアルプスの少女ハイジ、2Fは平成狸合戦ぽんぽことパンダコパンダです。

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展覧会について

絵を描かない監督が、どのようにして、歴史に残るアニメーションをつくったのか。
他のクリエイターたちとの交流や、共同制作の過程を通して明らかにします。

初の長編演出(監督)となった「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968年)で、悪魔と闘う人々の団結という困難な主題に挑戦した高畑は、その後つぎつぎにアニメーションにおける新しい表現を開拓していきました。

70年代には、「アルプスの少女ハイジ」(1974年)、「赤毛のアン」(1979年)などのTV名作シリーズで、日常生活を丹念に描き出す手法を通して、冒険ファンタジーとは異なる豊かな人間ドラマの形を完成させます。

80年代に入ると舞台を日本に移して、「じゃりン子チエ」(1981年)、「セロ弾きのゴーシュ」(1982年)、「火垂るの墓」(1988年)など、日本の風土や庶民生活のリアリティーを表現するとともに、日本人の戦中・戦後の歴史を再考するようなスケールの大きな作品を制作。

遺作となった「かぐや姫の物語」(2013年)ではデジタル技術を駆使して手描きの線を生かした水彩画風の描法に挑み、従来のセル様式とは一線を画した表現上の革新を達成しました。

このように常に今日的なテーマを模索し、それにふさわしい新しい表現方法を徹底して追求した革新者・高畑の創造の軌跡は、戦後の日本のアニメーションの礎を築くとともに、他の制作者にも大きな影響を与えました。

本展覧会では、絵を描かない高畑の「演出」というポイントに注目し、多数の未公開資料も紹介しながら、その多面的な作品世界の秘密に迫ります。

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高畑勲さんの年譜。

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第1章 出発点
アニメーション映画への情熱


高畑勲は1959年に東映動画(現・東映アニメーション) に入社し、アニメーションの演出家を目指します。

演出助手時代に手がけた「安寿と厨子王丸」(1961)に関しては、新発見の絵コンテをもとに若き日の高畑が創造したシーンを分析します。その新人離れした技術とセンスは、TVシリーズの「狼少年ケン」(1963~65)でもいかんなく発揮されました。

劇場用長編初演出(監督)となった「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968)においては、同僚とともに試みた集団制作の方法と、複雑な作品世界を構築していくプロセスに光を当て、なぜこの作品が日本のアニメーション史において画期的であったかを明らかにします。

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「ぼくらのかぐや姫」

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「安寿と厨子王丸」

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「わんぱく王子の大蛇退治」

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「狼少年ケン」

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「太陽の王子 ホルスの大冒険」

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東映動画スタジオの内覧。

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東映動画アニメーターの机。

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「太陽の王子 ホルスの大冒険」は、ぼくたちの青春の一時期のすべてを注ぎ込んだともいえる、たいへんに思い出深い作品です。

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大塚康生さんによる追悼文。

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第2章 日常生活のよろこび
アニメーションの新たな表現領域を開拓


東映動画を去った高畑は、『アルプスの少女ハイジ』(1974)にはじまり、『母をたずねて三千里』(1976)、『赤毛のアン』(1979)という一連のTVの名作シリーズで新境地を切り拓きます。

毎週一話を完成させなければならない時間的な制約にもかかわらず表現上の工夫を凝らし、衣食住や自然との関わりといった日常生活を丹念に描写することで、一年間52話で達成できる生き生きとした人間ドラマを創造したのです。

宮崎駿、小田部羊一、近藤喜文、井岡雅宏、椋尾篁らとのチームワークを絵コンテ、レイアウト、背景画などによって検証し、高畑演出の秘密に迫ります。

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「パンダコパンダ」

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「子どもの心を解放し、生き生きさせるような本格的なアニメシリーズを作るためには、どうしなきゃいけないのかということを一生懸命考えた。」

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「アルプスの少女ハイジ」

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「母を訪ねて三千里」

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「赤毛のアン」

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第3章 日本文化への眼差し
過去と現在の対話


映画『じゃりン子チエ』(1981)、『セロ弾きのゴーシュ』(1982)以降は日本を舞台にした作品に特化、日本の風土や庶民の生活のリアリティーを活写します。

その取り組みは、1985年に設立に参画したスタジオジブリにおいて、『火垂るの墓』(1988)、『おもひでぽろぽろ』(1991)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994)という日本の現代史に注目した作品群に結実します。

戦中・戦後の経験を現代と地続きのものとして語り直す話法の創造と、「里山」というテーマの展開に注目します。

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「じゃりン子チエ」

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「セロ弾きゴーシュ」

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「柳川堀割物語」
高畑勲さんが手掛けた実写のドキュメンタリー映画です。
高畑さんは、福岡県柳川市にロケハンに行かれています。

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「火垂るの墓」

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「おもひでぽろぽろ」

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10歳のわたしと27歳のわたし

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「平成狸合戦ぽんぽこ」

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「日本人が日本のアニメーションを作る、とはどういうことか、いつも考えていました。」

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第4章 スケッチの躍動
新たなアニメーションへの挑戦


高畑はアニメーションの表現形式へのあくなき探求者でもありました。

90年代には絵巻物研究に没頭して日本の視覚文化の伝統を掘り起こし、人物と背景が一体化したアニメーションの新しい表現スタイルを模索し続けました。

その成果は『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)と『かぐや姫の物語』(2013)に結実します。

デジタル技術を利用して手書きの線を生かした水彩画風の描法に挑み、従来のセル様式とは一線を画した表現を達成しました。美術への深い知識に裏付けられた高畑のイメージの錬金術を紐解きます。

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「ホーホケキョ となりの山田くん」

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「かぐや姫の物語」

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「描いてない部分があるとか、ラフのタッチのままだとか。
そしてそれが、とりもなおさず、見る人の心に、記憶を探ろう、想像しようという気持ちを呼び覚ますんだと思います。
「かぐや姫の物語」での線の途切れ・肥痩、塗り残しがたつきなどは、そのためにやくだったのではないでしょうか。」

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会場には、グッズ販売コーナーもあります。

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福岡市美術館「高畑勲展」、ぜひ足を運んでみてください。

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「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」
会期:2021年4月29日(木・祝)~7月18日(日)
休館日:月曜日(ただし、 5/3(月・祝)は開館、 5/6(木)は休館)
時間:午前9時30分~午後5時30分(入館は閉館の30分前まで)
※7月の金・土曜日は午後8時まで開館(入館は閉館の30分前まで)
会場:福岡市美術館(福岡県福岡市中央区大濠公園1-6)
主催:福岡市美術館、 西日本新聞社、 FBS福岡放送
企画協力:スタジオジブリ
協力:(公財)徳間記念アニメーション文化財団、 大濠テラス
制作協力:NHKプロモーション
観覧料(税込):一般1,500円、 高大生1,000円、 小中生600円
※大学生以下の方はご入館の際、 学生証や生徒手帳等をご提示ください。
※身体障害者手帳、 精神障害者保健福祉手帳、 療育手帳の提示者とその介護者1名、 および特定疾患医療受給者証、 特定医療費(指定難病)受給者証、 先天性血液凝固因子障害等医療受給者証、 小児慢性特定疾病医療受給者証の提示者、 および未就学児は観覧無料。
高畑勲展WEBサイト
福岡市美術館WEBサイト
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